いい睡眠取れていますか? ~良眠を得る為に~ その①
皆さん、毎日いい睡眠取れていますか?かつてアメリカで断眠マラソンというのが行われたことがありますが、
何日も眠らない結果、幻覚が出てきたり、イライラしやすくなったり、
精神が高揚するといった影響が出て、最終的には起きていられなくなり眠りこんでしまったとのことです。
それ位、睡眠は人にとって欠かせないものです。
現在、日本の成人の5人に1人は、なんらかの眠りに関する問題を抱えていると言われています。
そこで今回は、睡眠について少し書いてみようと思います。
不眠症とノンレム睡眠
不眠症とは睡眠障害の一種で、「寝つけない(入眠障害)」「夜中によく目が覚める(中途覚醒)」
「熟睡できない(熟眠不良)」「早朝に目が覚める(早朝覚醒)」などの睡眠トラブルのために、
「昼間の日常生活に支障をきたす」状態が続くことです。
ここで注意して欲しいのは、昼間に支障を来さなければ、
睡眠時間が短かろうが・熟睡できなかろうが・朝早くに目が覚めても
・寝付けなくても大丈夫で治療は不必要だと言うことです。
眠りには「レム睡眠」と呼ばれる眼球が左右に振り子のように
動いている浅い睡眠と、「ノンレム睡眠」という眼球の動かない深い睡眠があります。
一般に「レム睡眠」は身体を休ませる睡眠、「ノンレム睡眠」は脳を休ませる睡眠と言われています。
眠りの初めに深いノンレム睡眠が多く見られ、ノンレム睡眠中は
さまざまなホルモンが分泌され、疲労回復に役立っています。
また、ノンレム睡眠の時に成長ホルモンが分泌され、
骨や筋肉を成長させるので、特に子どもにとって睡眠は成長のために非常に大切です。
一方レム睡眠は、体が眠っている状態で、脳は半分起きている状態です。
昼間に得た情報を整理したり、記憶を定着させる働きがあると言われています。
深いノンレム睡眠は思春期以降減っていき、浅いノンレム睡眠が多くなってきます。
中高年になると、体が必要とする睡眠量は少なくなります。
これらのレム・ノンレム睡眠はおよそ90分単位(個人差あり)で波のように
周期的に繰り返されるとされ、朝スッキリと目覚めるには、
睡眠後3時間経過してから90分単位で起床時間を計算すると良いと言われています。
このことから、およそ4時間半、6時間、7時間半が
スッキリ目覚めるのに適した睡眠時間であると言われています。
体内時計を元に戻すホメオスタシス
それでは、その睡眠をコントロールしているものは何なのでしょうか?
人には時を感じ1日の体のリズムを作る「体内時計」が備わっています。
その「体内時計」により、朝になると目が覚め、
夜になると自然に眠くなるといった1日の身体のリズムが生まれます。
年をとると早起きになってくるのは、多くは加齢に伴う体内時計の変化が関係しています。
最適な睡眠時間は人それぞれ違います。
日中、疲労感や眠気を感じずに元気に活動できていれば、
それがその人にとって最適な睡眠時間ということになります。
また、年齢によって睡眠は質も量も変わっていきます。
ホメオスタシスとは、体温を一定に保つ、傷を治す、
体内のウィルスを排除するなど、体の状態や性質が一定に保たれる事をいいます。
ホメオスタシスの睡眠への働きとして、
人の生体を維持するために、眠りの質を自動的にコントロールする機能があります。
ホメオスタシスは、肉体や脳の疲労度に応じて眠りの質をコントロールし、
短い睡眠時間でも効率的に体と脳を休ませるように働きます。
ホメオスタシスの機能により、覚醒時間が長かった場合(睡眠不足の場合)、
入眠直後に深い眠り(ノンレム睡眠)がより多くなり、それまでの睡眠不足を穴埋めしてくれます。
こうして、人の持つホメオスタシスが睡眠の「質」を自動的にコントロールして
不足分を補ってくれるため、前夜寝不足であったとしても、
「意識的に長く」寝ようとしなくても良くなるのです。つまり、「寝貯めは出来ない」という事になるようです。
繰り返しになりますが、これはあくまでも「睡眠前」の身体の状態に応じた働きであるため、
「起床後」のことが考慮されているわけではなく、
例えば「明日は遅くまで起きてなくてはならないから、今日は一杯寝ておこう」という事には効果がないのです。
また、深い眠り(ノンレム睡眠)は入眠直後により多く現れ、
その必要量を満たすと、それ以降の睡眠中には深い眠りはほとんど出現しなくなり、逆に浅い眠りが中心になります。
ですから、いたずらに長く臥床時間を取って寝ようとしても、
後半は浅く物足りない寝たのか寝ていないのか判然としない眠りについているのです。
体内時計と自転周期の関係
そういった睡眠をコントロールする体内時計は、地球の自転と同じく24時間であると考えられてきました。
と言うのも、私たちは時間の経過(地球の自転)に合わせて
「毎日大体同じ時間に寝て、大体同じ時間に起きる」ことができるからです。
しかし、ある実験で被験体となる人や動物を、窓などがなく明暗の変化がない室内環境で、
時計など時間の経過がわかるものを置かない状態で隔離すると、体内時計に狂いが生じることが分かりました。
ズレの幅は個体によって異なるものの、ズレが大きな人でおおよそ一時間前後(23~25時間程度)は
ズレるということが分かりました。つまり、地球の自転周期(24時間周期、朝と夜の交代周期でもある)と
人の体内時計には、人によっては一時間程度のズレが生じているという事です。
ところが、不思議なことに私達は、多くの場合、
「毎日大体同じ時間に寝て、大体同じ時間に起きる」という、
地球の自転と同調した生活を当たり前のように送っています。
この体内時計のズレの理由については諸説あるようですが、ともあれ、
通常、私たちは体内時計のズレを知らず知らずのうちに調節して24時間で生活できているのです。
逆に、この知らず知らずの調節ができなくなると、色々不都合な事(不眠症など)が起こると言えるため、
この体内時計の自動調節の謎を理解しておく必要があります。
(次号に続く)