いい睡眠取れていますか? ~良眠を得る為に~その②
前号で、睡眠時間は
1.5時間の整数倍(3時間、4.5時間、6時間など)が目安で、
日中の生活に支障が無ければ睡眠時間の長短はあまり問題とならず、また寝だめは出来ない等お話しました。
今号では、睡眠と関わる重要なホルモン、セロトニンとメラトニンについてお話します。
体内時計を調整するカギは「セロトニン」
睡眠をコントロールする体内時計は放って置くと1時間程度のズレ(例えば6時に起きるつもりがどうしても7時になり、8時に、そして9時に・・・)が
生じるのですが、そのズレを調節するカギは神経伝達物質「セロトニン」なのです。
体内で睡眠をコントロールするセロトニンはノルアドレナリンやドーパミンと並んで
体内で特に重要な役割を果たしている三大神経伝達物質の1つで、
ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、「心のバランス」を整える作用のある伝達物質です。
皆さんは、自律神経(交感神経・副交感神経)という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?
セロトニンは、朝覚醒時に自律神経に働きかけ脳を覚醒させ、交感神経を刺激して体内時計の1時間のズレをリセットします。
そして、交感神経が刺激されることで、人の体は意欲的・活発に活動することができるようになります。
また、セロトニンは日中に交感神経を刺激し体の活動状態を保ち続けますが、時間が経過し夕方から夜に掛けては次第に働きを弱めていきます。
すると今度は副交感神経が相対的に優位となり、体が沈静化してきて眠りに就く準備に入ります。
セロトニンが働かなくなるとどうなる?
それでは、こうした自律神経(交換神経・副交換神経)に働きかけ、
一日の生活リズムを作り出しているセロトニンが何らかの理由で働かなくなってしまうとどうなるでしょう?
体内時計がうまく働かなければ、最大で1時間程度のズレが生じますから、
生活リズムが崩れてしまうことは容易に想像できると思います。
しかも、セロトニンが不足すると精神のバランスが崩れて、
暴力的(キレる)になったり、うつ病を発症すると言われています。
もうひとつの重要ホルモン「メラトニン」
ところで、睡眠をコントロールするホルモンでもう
一つ大切な物質があります。それは、メラトニンです。
メラトニン濃度には日内変動があり、日中は血中の濃度が低く、
夕方から夜につれて濃度が増え次第に眠気が増していきます。
その後、入眠後から朝に掛けて、
メラトニンは徐々に濃度が下がり覚醒レベルも上がりやがて目が覚めていきます。
このメラトニンの分泌量は、乳幼児期(1~5歳)に最も多く、
「寝る子は育つ」という言葉があるように、大量のメラトニンを浴びて子供は実に長時間眠ります。
また、睡眠中は成長ホルモンが分泌される貴重な時間でもあり、
成長期に十分な睡眠を取ることは子供の成長には欠かせません。
思春期を過ぎると、メラトニンの分泌量は徐々に減り始め、歳を重ねる毎にさらに減り続けます。
前述の通り、メラトニンは睡眠に作用するホルモンですので、分泌量が減ると眠れる時間も減ってしまいます。
歳を取るにつれ、年々睡眠時間が減るのも、
高齢者が朝早く目覚めてしまうのも、メラトニンの分泌量が減少したせいだと言えます。
体内時計をコントロールするメラトニンは、
通常朝起きてから一定時間経過後(起床して14~16時間後)に
分泌され始めるため、生活リズムを維持するには、眠りに就く時間よりも、
「朝起きる時間を一定に保つ」ほうが重要であると言われています。
さらに驚きの事実として、メラトニンはセロトニンによって分泌を促進されるという特徴を持つホルモンなのです。
つまり、セロトニンが不足している人(例えばうつ病の方)には
睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌する力が少なく、結果として不眠症になりやすいのです。
極論を言うと、不眠症に悩まれる方は、うつ病の可能性もあるという事になります。
このように、良眠を得るためには、カギとなる「セロトニン」を
如何に上手くコントロールするかが重要になってきます。(次号に続く)