フレイルとサルコペニアについて ~②活き活きとした老後を保つために~
前号では、加齢に伴って筋肉量・筋力が低下する病態であるサルコペニアと、
そういった身体的な変化が様々なストレスに対する脆弱性を引き起こし、
機能障害・要介護状態・死亡などの不幸な転機に陥りやすい状態(フレイル)について説明しました。
つまり、活き活きとした老後を保つには、如何にサルコペニアを予防するかだと言えます。
サルコペニア進行の悪循環と、転倒の原因
さて、サルコペニアを進行させる悪循環として以下の3つが考えられています。
- サルコペニアにより転倒や転落の機会が増加する。骨折を来しやすくなり、その結果さらに体を動かすことが少なくなる。
- 身体を動かすことが減ることで、食事の量が少なくなる → 低栄養の進行、蛋白合成障害を来たし、その結果筋肉量が減ってしまう。
- アミノ酸プール(体内に貯蔵する総蛋白量)も減ってくると、病気や外傷などで蛋白の必要量が増加した場合の対応能力が低下します。そのため病的状態からの回復が遅延する。
そして以下の3つが、サルコペニアに伴う転倒のメカニズムとして考えられます。
- 下肢筋力(股関節から下の筋肉)の低下:
年をとると、筋力が不足してくるため、歩行時の足関節の背屈(つま先を上げる動作)が困難になります。また、脚が上らないため、すり足歩行になり、つまづきやすくなります。 - 平衡感覚の機能低下:
高齢者は、筋力の低下とともに平衡感覚をつかさどる器官が衰えてしまいます。このため、歩行動作中のバランスが悪くなり、歩行動作が不安定になります。 - 視力の低下による段差認識の不足:
視力が低下することで、段差や物などに気が付きにくくなり、ちょっとした段差でも、つまずき転倒しやすくなります。
効果的なサルコペニア対策とは
以上の事から、筋肉量を増やすためにしっかりと蛋白質を摂取し、
筋肉トレーニングに励むことが最大のサルコペニア対策です。
簡単なトレーニングでも筋肉トレーニングをすれば
筋肉は損傷されますので、その修復にも蛋白質が必要です。
食事で充分な蛋白質を補わないと、筋肉が減ってしまいます。
食事で摂った蛋白質は、体内で消化されるとアミノ酸に分解されますが、
体が必要とする20種類のアミノ酸のうち、9種類は体内でつくることができず、
食べ物から摂る必要があり、「必須アミノ酸」(バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、リシン、ヒスチジン)といいます。
この9種類がバランスよく含まれているものが、良質の蛋白質です。
良質の蛋白質かどうかの目安となるのが「アミノ酸スコア」で、
この数値が100以上あれば、9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれる良質の蛋白質です。
具体的には、卵や肉・魚の多くがアミノ酸スコア100以上ですので、
あまり意識せずしっかりと摂取すれば良いと言えます。
また、必須アミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンはBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれ、
運動前にグルタミン酸と共に摂ると、筋力を高める効果があります。
以前から私は皆さんに「糖質制限」をお勧めしていますが、それは水分を除いた場合、
人間の体を構成する成分は、50%は蛋白質で、40%は脂肪で、残りの10%が
ビタミン・ミネラル・糖質等から構成されているという事実に基づいており、
蛋白質と脂肪摂取中心の糖質制限食はサルコペニア対策そのものなのです。
そして、しっかり食べた後は運動です。でもそんなに難しいことは要求しませんからね。
次の2つの運動を「毎日」行ってください。
1: 食卓に座って、その場で「10回」立ち上がって座る
出来るだけしっかりとバランスを崩さないように、ゆっくりと立って座ってください。
最初はテーブルの端や肘掛を持ったりしても大丈夫です。
それを、朝昼晩の計3回行ってください。
出来れば、10回から20回以上に増やしていければ良いですね。
2: 椅子の背もたれの横に立ち、片方の足を前に軽く挙上した片足立ちを「3分」行う
支えている足の裏でしっかりと床を掴む感じで行ってください。
そして反対側も「3分」行ってください。
最初は「1分」でも構いません。これを朝昼晩の計3回です。
これも出来れば5分とか出来るようになればいいですね。
以上、簡単なことですが、まずは始める事です。
ハードな事をしても、続かなければ意味がありません。
当然、普段ジムやプール等行かれている方は継続してくださいね。
しっかり食べてしっかり運動して、元気ハツラツな老後を目指しましょう!